前回(34)「サブドミナント・マイナーとは?」では、ダイヤトニック上のサブドミナント・コード(Ⅳ)を基本であるメジャーからマイナーに変える、正確には「マイナー・ダイヤトニックからお借りしてくる」という内容を中心にコード進行に変化を付けるアイデアをご紹介しました。今回はその続き、応用編です。マイナー・ダイヤトニックからお借りできるもの全てを使ったら?という発想です。では行ってみましょう。
マイナー・ダイヤトニック・コードを機能別に分類
マイナー・ダイヤトニック・コードにはどのようなコードがあったでしょうか?ここではコードの機能という観点で分けて考えてみます。ダイヤトニック・コードは3つに分けられる、という話は(27)「3つしかないコードの機能」のところで説明済みですが、マイナー・ダイヤトニック・コードにおける3つの機能、すなわちトニック(T)、ドミナント(D)、サブドミナント(SD)は以下のようになります。3種類ある各マイナースケールごとに異なる部分がありますので注意深く見てください。Tsubなどと略字の意味は以下の通りです。
T・・・このキーにおける標準のトニックコード
Tsub・・・トニックの代理コード
D・・・このキーにおける標準のドミナントコード
Dsub・・・ドミナントの代理コード
SD・・・このキーにおける標準のサブドミナントコード
Dsub・・・サブドミナントの代理コード
いかがでしょうか?こうやって並べてみると何が何だか分かりにくいですよね^_^;
下に、機能ごとに全てのコードをまとめてみます。
TおよびTsub・・・Ⅰm7(Cm7)、ⅠmMaj7(CmMaj7)、
bⅢMaj7(EbMaj7)、bⅢaugMaj7(EbaugMaj7)、
bⅥMaj7(AbMaj7)、Ⅵm7b5(Am7b5)
DおよびDsub・・・Ⅴm7(Gm7)、Ⅴ7(G7)、
Ⅶdim7(Bdim7)、Ⅶm7b5(Bm7b5)
SDおよびSDsub・・・Ⅳm7(Fm7)、Ⅳ7(F7)、
Ⅱm7b5(Dm7b5)、Ⅱm7(Dm7)、
bⅥMaj7(Ab7)、bⅦ7(Bb7)
ザックリと3つにグループ分けできました。これをもとに代理コード進行を作ってみるというわけですね。
マイナー・ダイヤトニックから借用してきたコードをはめてみる
上記2つはどちらも、サブドミナントの代理コードです。SDコードつまりFMaj7が来るはずのところに代わりのコードが出てきています。「SDおよびSDsub」グループの「bⅥMaj7(Ab7)」と、「bⅦ7(Bb7)」を使用しています。
次の例は、TコードとDコードも代理コードになっています。このコード進行例ではコードが半音階的に上昇して結末に向っていきます。IMaj7の代わりにbⅥMaj7を、Ⅴ7の代わりにⅦdim7を使用しています。
最後に、半音階的下降進行の例を作ってみます。ここでは3小節目に「裏コード」を持ってきてなめらかな半音進行を可能にしています。メロディがコードに即してbしている部分に注意して下さい。
以上、マイナー・ダイヤトニック中のダイヤトニック・コードを知ることでそれをいかに応用するかを紹介してきました。同じひとつのメロディ・ラインに対して、標準のメジャー・キーのダイヤトニック・コードから始まって、どのようにして次第に複雑かつ魅力的なコード付けが出来るのか、コード進行を生み出せるのか、大なり小なり参考になれば嬉しく思います。ここまでが、広い意味でのダイヤトニック・コードの守備範囲だと言えるでしょう。これら以外になると、ダイヤトニック・コードから外れた特殊なコード(進行)の領域になりますが、それを見分けるためにも、このダイヤトニック・コードの可能性を理解しておくことが重要となります。
※参考記事:ダイヤトニック・コードによるコード進行の記事一覧
(27)3つしかないコードの機能:ダイヤトニックによるコード進行その①
(28)標準の代理コード:ダイヤトニックによるコード進行その②
(29)セカンダリー・ドミナント:ダイヤトニックによるコード進行その③
(31)マイナー・ダイヤトニック:ダイヤトニックによるコード進行その⑤
(32)マイナー・ダイヤトニックのコードフォーム:ダイヤトニックによるコード進行その⑥
(33)マイナー・ダイヤトニック・コードの使用例:ダイヤトニックによるコード進行その⑦