もしも「ふるさと」が短調だったら・・・Cmに変えた「ふるさと」のコード進行を考える
前回まででマイナー・ダイヤトニックの3つのタイプを紹介しましたので、いよいよそれらのダイヤトニック・コードを使ってどのようなコード進行、ハーモニーが生まれるのか試してみましょう。題材は同じく「ふるさと」の末尾4小節で参ります^^主音は同じCであるものの、キーが短調になっている、この「同主調」マイナー(Cm)でコード進行を考えてみます。
ここでちょっと・・・五線譜のドやソなどオタマジャクシの高さは見た目Cメジャーの時と全く変化ないのですが、あらかじめE音A音B音はb(フラット)していますのでご注意ください。ト音記号の横にb(フラット)がありますよね。ですのでメロディも少し異なっています。実際に弾いてみながら確認してくださればと思います。
それでは順に、ナチュラル・マイナー、ハーモニック・マイナー、メロディック・マイナーのダイヤトニック・コードを用いた「ふるさと」のコード進行例です。なお、曲の終止感をシンプルにするためこの例ではⅠのコードはシンプルなマイナー・トライアドで書いてあります。
「ふるさと」ナチュラル・マイナー編
ナチュラル・マイナーです。図の2小節目3小節目に2種類コードを付けてありますがどちらでもいいという意味です。機能的に同じです。
このナチュラルのCmはEbメジャーと全く同じ音階・コードを使って、メロディ全体が3度下がっているものとも言うことができます。ちなみにこのCmとEbの関係を「並行調」と言います。ナチュラル・マイナーでは特別個性的という訳でもなく割と穏やかにマイナーで曲を閉じるという印象です。とりあえず現時点ではナチュラルはこんな感じと思っておけば良いでしょう。次に出てくる2つのマイナー・ダイヤトニックと比較したときに初めてこの性格が引き立つように思います。
「ふるさと」ハーモニック・マイナー編
次はハーモニック・マイナー。3小節目のコードが、ナチュラルの時のコードと異なっていますね。そうですドミナント・セブンスのコードサウンドです。dim7というコードもドミナント・セブンス・コードと同様、トライトーンを含んでおり、機能的にはG7とBdim7は同じ働き、Cmへの終止感をより明確にしています。ナチュラル編と比較して聴いてみてください。「Bb7(Fm7)⇒Cm」より「Bdim7(G7)⇒Cm」の方が吸い寄せられる進行感があるのが分かると思います。
次のコード進行例は、G7つまりⅤ7コードに対して関係する5度上のⅡのコードを更に追加したものですが、いわゆる「マイナー・ツー・ファイブ」進行です。メジャー・ダイヤトニックのところで「Ⅱm7ーⅤ7ーⅠ」というコード進行を紹介済ですが、これはそのマイナー版「Ⅱm7b5ーⅤ7ーⅠm」です。もう少し付け加えると、ハーモニック・マイナー版ということになります。次に紹介するメロディック・マイナー版のマイナー・ツー・ファイブもありますが、それと比べるとより一般的で明瞭なマイナー進行と言えるでしょう。
「ふるさと」メロディック・マイナー編
最後にメロディック・マイナーです。この「ジャズ・マイナー」とも呼ばれるメロディック・マイナーはコード進行のサウンドが他の2つに比べ難解な印象ですが、これがまた癖になる美味(^^) その理由は、このメロディック・マイナーを構成している音階は、実はメジャースケールの3度をマイナーに変えただけという、マイナーでありながらメジャーの構成音に極めて似通っているというところにあります。
コードサウンドの特徴を言いますと、なんとⅣコードもⅤコードも2つとも、ドミナント・セブンス・コードになっている点です。通常、楽曲のキーを決定してて属音(属和音)と呼ばれているドミナント・セブンスのコードサウンドが2つ含まれる訳ですから、調性の焦点が定まりにくい印象を与えています。
このメロディック・マイナーのマイナー・ツー・ファイブ進行では「Ⅱm7ーⅤ7(-Ⅰm)」というコードになるわけですが、これはメジャー・キーと全く同じです、つまり聴き方次第では、最後のⅠのコードが出るまではメジャーなのかマイナーなのか判別できないということになります。とまあ、メジャーっぽくも聞えるマイナーということになればこれは複雑ですよね。
いかがだったでしょうか?これで同じ「ソソソドーレミファファレド―」のメロディに対して、メジャー、ナチュラル・マイナー、ハーモニック・マイナー、メロディック・マイナー、の全てのダイヤトニック・コードをコード付けした例を見てきたことになりますが、それぞれの違い、味、雰囲気など自分なりに感じるものが色々とあったのではないでしょうか。ダイヤトニックの理論上の基本は以上になりますが、これら以外のコード進行やハーモニーというものがもちろん無いわけではありません。それに関してはまた別の機会に紹介できればと思いますが、その領域というのは基本にあるダイヤトニックの進行感をいかに破壊しいつもと異なるまた新たなサウンドを求める挑戦の中から偶然にあるいは熟考の結果生まれてきたコード(進行)という領域になってくるかと思いますので、もはや作曲者のセンスと個性による部分が大きい内容となってきます。いずれにしても、何より自分自身がそのコード(進行)を聴いて感じて、その違いに対して感動を受け「このコードよりやっぱりこれがいいな!」と言ったイメージあるいは好み、こだわりというものが出てくるまで、何度も弾き比べ聴き比べしてみて下さい。そして是非、色んな音楽をコードやハーモニーにより一層注意を払って聴いてゆく、ということを始めて(続けて)みたら良いかと思います。