前回まで、ダイヤトニック・コードの使用例を基本から応用まで解説してきました。これらは厳密に言うと「メジャー・ダイヤトニック」でした。しかしメジャーに対してもう一つ大きな存在がありますよね、マイナーです。ここからは「マイナー・ダイヤトニック」の世界へと突入してゆきます☆
曲がマイナーで終わるとどんな感じ?
さてマイナーキー、短調とはどんな感じだったかここで簡単に確認してみます。上記の例(「ふるさと」末尾4小節)では、メロディ・ラインは全く変更がありません。しかし、曲のキー(調)がCメジャーからAmに転調して終わってしまっています。試しに、コード進行だけ弾きながら耳を傾けてみて下さい。とうてい「ふるさと」であるとは思えないのではないでしょうか。メロディは変わらずコード進行が変わってゆくというケースは、様々なジャンルの楽曲でよく使われる作曲のアイデアでもあります。リハーモナイズという言葉もありますが、これはジャズでテーマのメロディはそのままに、幾通りものコード(進行)を即興的に組み合わせてゆく手法です。
マイナー・ダイヤトニックは基本3つ
「ドレミファソラシド」要するに「全・全・半・全・全・全・半」の音程間隔で並べられた音階のことを「メジャー・ダイヤトニック・スケール」と呼び、その7種類の音から出来た7つのコードを「(メジャー・)ダイヤトニック・コード」と呼ぶ、このようなことはこれまでのシリーズで紹介してきたとおりです。ではキーがマイナーの場合はどうなのでしょうか?
マイナー・キー(短調)について学んでゆく際に、まず知っておいたほうが良いことが、マイナーは基本的に3種類あるということです。3種類のマイナー・スケール(短音階)とそこから派生してくるマイナー・ダイヤトニック・コード群があるということです。
(1)ナチュラル・マイナー(自然短音階)
(2)ハーモニック・マイナー(和声的短音階)
(3)メロディック・マイナー(旋律的短音階)
この3つの名称は非常になじみ深い言葉だったかもしれませんね。では、その違いや意味合い、そして実際の使い方についてはどうでしょうか?これらのことを見てゆく前に、まずはマイナー・ダイヤトニックの一覧表を掲載しておきます。キーは、Cメジャーとの比較がしやすいようにCmを例にとりました。キーCmは、予めE音・A音・B音にb(フラット)記号が付いており、メジャー・キーで言うとEbメジャーと同じ音階組織になっています(EbとCmは並行調の関係)ので注意して下さい。
ナチュラル・マイナー
ナチュラル・マイナー(自然短音階)は、「C・D・Eb・F・G・Ab・Bb(・C)」という7つの音からなり、これは「全・半・全・全・半・全・全」という音程間隔です。実はこれはEbメジャー・スケールを6番目の音にあたるC音から数え直しただけの音階だったのです。各コードの響きやつながりは、良い意味でも悪い意味でもクセなくなめらかな印象です。
ハーモニック・マイナー
ハーモニック・マイナー(和声的短音階)は、「C・D・Eb・F・G・Ab・B(・C)」という7つの音からなり、これは「全・半・全・全・半・1音半・半」という音程間隔です。7番目の音がBbからBに変更されています。特にAb音からBへの1音半の跳躍はクセが強く、Ⅴコードのタイプがドミナント・セブンになっています。その他、m(Maj7)やaug(Maj7)、dim7といった複雑な響きのするコードが出てきます。
※m(Maj7)、aug(Maj7)、dim7のコードフォーム参照記事:「丸暗記したいセブンスコード主要フォーム:知識ゼロからのギターコード攻略(14)」
メロディック・マイナー
メロディック・マイナー(旋律的短音階)は、「C・D・Eb・F・G・A・B(・C)」という7つの音からなり、これは「全・半・全・全・全・全・半」という音程間隔です。3番目のEb音からBまで全音音程が連続します。これはCメジャーとの比較で言えば、3度の音が半音下がっただけの違いとなっています。しかしコードに関しては、m(Maj7)やaug(Maj7)、そして2つのm7(b5)コードによってサウンドもつながりも難解な印象です。
マイナー・ダイヤトニックの使い方など詳細は次回以降に述べるとして、今回はまずこの3種類の音階およびコード群を見比べ聴き比べてみて頂きたいと思います。複雑すぎてコード押さえ方が分からないという方は、次回にコードフォームの一覧を載せますのでそちらをご覧ください。