「裏コード」の理論と実際
前回はセカンダリー・ドミナント、前々回はダイヤトニック内の代理コード、というアイデアでダイヤトニック・コードを土台としてコードを入れ替える方法について見てきました。さて今回は、「裏コード」です。
裏コードというのはドミナント・セブンス・コードの置き換えについての手法ですが、ここではドミナント・セブンスというコードを形成している最も重要な音に着目します。不協和音程である「トライトーン」です。このトライトーンという音程は1オクターブ内に最も遠い位置にある二つの音、12個の半音をちょうど真ん中で割ったような距離、増四度もしくは減五度の音程です。Cのキーで説明すると、F音とB音ということでした。
※参照記事:音楽のタネあかし!?ダイアトニックコード③:知識ゼロからのギターコード攻略(17)
このF・B両者を含むG7というコード、これはキーCのダイヤトニックの5番目のコード、つまりⅤ7です。ところで、このF・B音程を含むドミナント・セブンス・コードは、実は12調のメジャー・ダイヤトニック・コード群の中にもう一つあります。
キーがGb(F#)のダイヤトニック・コードのドミナント・コードを確認してみましょう。
Ⅰ=GbMaj7
Ⅱ=Abm7
Ⅲ=Bbm7
Ⅳ=CbMaj7
Ⅴ=Db7
Ⅵ=Ebm7
Ⅶ=Fm7(b5)
Ⅴ=Db7の構成音は、Db・F・Ab・Cb(=B:異名同音)
いっぽうG7の構成音は、G・B・D・Fです。
Db7は、G7と同じトライトーンを有していますね。ということでCのキーに戻して捉えなおすと
「Ⅴ7の代わりにbⅡ7が使える」
ということになります。これを裏コードと言います。
ダイヤトニックのⅤコードの裏コード
上段が元になるコード進行、下段が裏コードを使った例です。ここでは3小節目「G7」を「Db7」に入れ替えてあります。コードを変えたのに合わせてメロディも半音階的に修正してあります。このようにコードに手を加えるということは音階にも手を加えることになり、メロディにも影響が出る場合があります。
セカンダリー・ドミナントの裏コード
裏コードのアイデアは、セカンダリー・ドミナントの場合にも応用が可能です。ここではFへと進行するC7の裏コードとして「Gb7」というコードが出てきています。Gb7の前に、C7に関係するGm7(Ⅱ-Ⅴの関係)が出てきていますが、これによって2小節目を、頭からGb7にした場合に比べて、元のメロディに手を加える必要がなくコードとメロディの流れがよりなめらかになっています。
関係するⅡm7も裏コードとセットで
この例では後半の「Bm7(b5)ーE7ーAm7」の部分が「Fm7ーBb7ーAm7」に変更されています。これはⅤ7に関係するⅡm7コードをセットにして裏コードに変更できるという例です。「E7」の代わりに「Bb7」これが裏コード、そのBb7(Ⅴ7)に対するⅡm7の位置にあるコードが「Fm7」ということになります。