コードって回るの?
前回は、コードの中にトライアドのフォームが含まれているということで、5つの基本コードのうちG、C、E、Aのフォームについて見て行きました。今回はのこり一つのコード、Dのフォームを見てゆきます。このDだけなぜ別に扱ったのか?という理由にお答えしながら進めてゆきたいと思います。
Dメジャーの構成音は以下の通りです。
さて、Dの開放弦ポジションのコードフォームを見ると、これまで見てきたメジャートライアドのフォームがどうもかみ合わないことにお気づきでしょう。
Dのコード(左上)と同じ、④弦上にルートを置いて並べたトライアド(右上)とでは、形が一致しませんね。
かと言って、③②①弦で作るトライアド(右下)ではこれまた一致しません。G、C、E、Aのときのようにコードフォームの中にトライアドのフォームがそっくりそのまま入っているという風には見えてきません。どうなっているのでしょうか?
ここで出てくるのが、「コードの転回」という言葉です。「展開」ではなく、「転がし回す」という漢字に注目してください。
「コードの基本は3度重ね」でご紹介したように、トライアドとは元の音から3度重ねで3つ音を並べたものでしたね。この「ルート・3度・5度」から「3度・5度・ルート」、そしてさらに「5度・ルート・3度」へと並べ替えたものを転回形と呼びます。それぞれ3度の音が最下のものを第一転回、5度の音が最下のものを第二転回と言ったりもします。「展開」ではなく「転回」でしたね。ちなみに英語では「inversion」(逆、倒置、反転などの意味)になります。
トライアドの「転回」とは?
さて、Dのメジャートライアドについてですが、この第二転回つまり、右下の図を見て下さい。下から「5度・ル―ト・3度」の順に並べ変えたここに、オープンDのコードの形が出てきましたね。このトライアドにもう一つ低音(ルート)を加えたものが、通常Dと言って弾いていたコードだったわけです。
Dメジャーのコードと、③②①弦上につくるメジャートライアドの第二転回形を並べてみます。
トライアドは三つの姿に変身
例えるならトライアドは、同一人物でありながら三つの様相に変身可能な存在だと言えるかもしれません。ではまとめです。
<今回のまとめ>
コードには「転回形」があり、トライアド(三和音)においては次の3種類に入れ替えできる
①基本型(ルートポジション:ルート・3度・5度)
②第一転回形(3度が最下:3度・5度・ルート)
③第二転回形(5度が最下:5度・ルート・3度)
最後に、メジャートライアドとその転回形の、③②①弦以外の弦上の現れ方について一覧できるように図を載せておきます。これはギターという楽器の特徴になるのですが、以前にも触れたようにチューニングの音程配置の関係から、使う弦に応じてコードの押さえ方が変化します。
いかがでしたか?
たかが3つの音を組み合わせるだけのトライアドなのですが、実に様々な現れ方をしますよね。最初はなかなかこれらの形が覚えられないかもしれませんが、よく音を聞きながら、あるいは自分で一緒に音程を歌いながら何度も練習してみてください。転回形もすべて、コードのサンドとしてはもとの基本型のサウンドと同じであるということをよく味わってみてください。
まわりくどいように見えますが、これらのトライアドを押さえては鳴らして少しずつ消化していってくださいね。毎日それぞれ1回ずつ弾いて確認するだけでもいいのです。それを1ヶ月続けてみてください。そして一旦全て忘れても構いません。しばらくたって、また思い出したように同じように1ヶ月・・・このようにして学べば、次第に音楽はあなたにとっての「使える」ものになってゆくでしょう。ぜひ参考にしてみてください。
なおここでは触れませんでしたが、トライアドにはメジャーの他にもマイナー、オグメント、ディミニッシュと4種類あるわけですから、それらの転回形とさらに使う弦ごとのフォームを全部弾くとなるとかなりの数になりますね・・・。また別の機会に掲載したいと思います。